寿岳 潤 先生のこと
天文教育普及研究会の会誌「天文教育」で、寿岳 潤 先生がご逝去されたことを知りました。昨秋のことだったようです。
寿岳先生は、日本における地球外知的生命体探査の第一人者として知られる、著名な天文学者です。
といっても、特に個人的に面識があったわけではありません。
大学のときに取った一般教養科目(天文学概論だったかな?)の先生だったというだけ。
しかも、当時は有名な先生だということを全く知らず、なんとなく単位のためだけに聴講していたのでした・・・
でも、そのお名前と講義は、今でも強烈に憶えています。
文系理系問わず、多くの学生が聴講する人気科目だったので、教室は階段席のかなり広い場所でした。
とある講義で、先生は大きな黒板の右端に太陽を描き、そこから左端まで線を引き、そこに(当時太陽系最遠の惑星だった)冥王星を描きました。
そして、
「これが太陽系の大きさだとすると、一番近い恒星の場所というのは・・・」
と言いながら、先生は線を引き続けたのです。
その線は黒板をはみ出し、壁に、そしてドアに・・・ついに先生は、チョークで線を引きながらドアの外に出て行ってしまいました!
教室内は騒然。
しばらくして、教室に戻ってきた先生は言いました。
「一番近い恒星を描こうと思ったけど、遠すぎてあきらめました」
教室内は大爆笑。
講義が終わって廊下に出てみると、壁には本当にチョークで引かれた線が。
太陽系に比べて、恒星間の空間がいかに広大か、建物外壁の途中で途切れた線が物語っていました。
いま私は、移動プラネタリウムの出張投影や星のイベントを通じて、宇宙がいかに広く、流れる時間がいかに悠久であるかを話しています。
それを、あんなふうに子どもたちに伝えることができたら、どんなに楽しいだろう。どれだけのインパクトを与えることができるだろう。
今になって、
なんとなく聴講していたあの時間は、いろんなことを学べるはずだった貴重な時間ではなかったのか?
実はとてつもなくもったいないことをしてしまったのではないか?
なんて、ちょっと残念に思ったりします。
学生諸君、どんな講義が将来どんな役に立つか、本当にわからんぞ。しっかり勉強せいよ。
寿岳先生のご冥福を、心よりお祈りいたします。

